テキストとイメージの近代:エンブレム文化の変容と寓意表象の多様性をめぐって
―シェイクスピア没後 400 年および漱石没後100 年記念ワークショップ―
山本 真司(天理大学)
植月惠一郎(日本大学)
森田 直子(東北大学)
司会・コーディネーター 古河 美喜子(日本大学)
本ワークショップは、本年一月末に出版された山本真司著『《シェイクスピア》と近代日本の図像文化学』を読みながら、比較文学的・図像文化学的観点からルネサンス以後におけるエンブレム文化の変容と寓意表象の多様性に注目し、図像文化への参照が多く見られる作家であるシェイクスピアと漱石を中心に、「テキストとイメージ」の関係が初期近代から近代にかけてどのように変化し、影響を与えてきたかについて考察する。
まず山本がその著書の概要を説明し、文学や演劇、物質文化をめぐるテキストとイメージの関係から近代にいたるエンブレム文化受容の変遷と変容に触れながら、シェイクスピアと漱石のテキストにみられる寓意表象の性格や多様性について論じる。
次に植月が、『吾輩は猫である』の最後の猫の溺死場面を中心に、トマス・グレイの「溺死した愛猫に寄せるオード」とブレイクの挿絵などとの影響関係や時代風刺的側面について考察する。
最後に森田が、物語の時間的進行と挿絵の関係や、読者が登場人物を受容する際の図像的・視覚的要素について、レッシング『ラオコーン』等を参照しつつ論じる。ロドルフ・テプフェールの美術論や絵物語にも言及する。
登壇する講師相互の意見交換のあと会場と質疑応答を行い、ワークショップを締めくくる。