日本比較文学会東北支部のページ

日本比較文学会の東北支部活動について情報発信して参ります。

日本比較文学会2017年度東北大会 発表者募集のお知らせ

日本比較文学会2017年度東北大会を11月11日(土)午後、あきた文学資料館において開催いたします。

 つきましては研究発表の募集を行いますので、題目(仮題でも可)と要旨(400字程度)を添えて、下記の支部事務局までお申し込み下さい。

 奮ってご応募下さいますよう、お願い申し上げます。

 

1.発表申し込み締切  2017年10月13日(金)

2.発表申し込み先   日本比較文学会東北支部事務局(右上プロフィール欄参照)

 

*なお、発表者で常勤でない方には、支部から交通費補助をいたします。

*発表申し込みをいただいた方には後日確認のメール(または郵便)をお送りします。

[事務局より]

・研究会に先立って、13:00より、同会場にて役員会を開催いたします。役員のみなさまはどうぞご参集ください。議題は別途お送りいたします。

 

・大会終了後、懇親会を開催いたします。会場は研究会と同じ東北大学片平さくらホールです。会費は一般会員4000円程度、学生2000円程度の予定です。準備の都合もございますので、ご出席いただけます方は、7/14(金)までに事務局(弘前大学・仁平政人、右上プロフィール欄参照)までご連絡下さいますと幸いです。

 

要旨③

西遊記受容史における佐藤春夫の位置

                井上 浩一(東北大学非常勤講師)

 

 作家、詩人の佐藤春夫(1892-1964)は、周知のとおり、中国文化の受容や児童文学の方面においても功績を残した人物である。そしてその功績の一つが、中国小説を原典とし、児童書として刊行された『西遊記』の編訳である。

 本発表では、数種類存在する佐藤訳『西遊記』の中で、臨川書店『定本佐藤春夫全集』第32巻に収められている『西遊記』(新潮社、1944年)が、日本の西遊記受容史においてどのような位置づけにあたるのか、発表者がこれまでに検討を加えた宇野浩二や伊藤貴麿など、他の作家による『西遊記』との比較を通して考察する。

 ただし、佐藤春夫による中国小説の翻訳で確認が必要となるのが、『平妖伝』の翻訳などで問題となっている代筆の問題である。そこで佐藤訳『西遊記』を西遊記受容史に位置づけると同時に、『西遊記』に代筆の問題が存在するのか否かについても、現時点で可能な限り検討したい。

要旨②

『トロイ戦争は起こらない』を解きほぐす ―《重ね書き》から上演まで―

                      間瀬 幸江(宮城学院女子大学

 

『トロイ戦争は起こらない』は、作者ジロドゥの記憶の重ね書きで編まれている。ホメロス叙事詩に表れるトロイ戦争の物語を外枠に持ちつつ、アリストパネスの『蛙』や中世の『トロイ物語』などのテクストを彷彿とさせる細部を含む。そして、ジロドゥが、主人公のエクトール同様に、最前線で戦争を経験したことが、重ね書きにさらに塗り重ねられたことだろう。

初演から80年以上が過ぎたが、初演が伝説化して語り継がれたために、ジロドゥの作品からは、メロドラマの絵空事のイメージを拭い去り難い。しかしすくなくとも『トロイ戦争は起こらない』の上演は、フィクションとドキュメンタリーの境界を巡る問いと向き合うことであり、そのことは、今日なお変わらない。演劇で戦争を語ることは、現実にある戦争といかに関わるのか。本発表の目的は、ジロドゥのテクストを構成するレイヤーを整理し、戦争を語るときに生起するフィクションのありかたについて議論を始めるための入口に立つことである。

要旨①

興行の比較映画史 ―戦前期の日本を中心として―

             成田 雄太(山形大学人文学部附属映像文化研究所)

 山本喜久男の『比較映画史』(一九八三)は、一八九九年から一九三五年までの戦前期において日本映画が欧米映画からどのような影響を受けたのか、入念な調査を行い検討した大著である。日本映画が欧米映画を学習していく過程を素描し、その類似性から差異を発見する、即ち日本映画の独自性を浮かび上がらせるという方法論は、その後の日本映画研究において大きな意味を持つこととなった。

 山本の比較映画史のアプローチにおいて、欧米からの影響は基本的に同時代の作品間、作家間の比較から求められる。一方で山本が対象とした戦前期における映画メディアの受容は、興行という側面、即ちそれがどのような形で上映されていたかという問題を無視することはできない。

 本発表は、映画館プログラムをはじめとした映画資料を用いて、比較映画史というアプローチを興行という側面から検討し直すものである。それによって作品や作家を論じるだけでは見えてこない、日本映画における欧米映画からの影響をより広範に捉えることを目的とする。