・大会に先立って、11時40分より、同会場にて役員会を開催致します。役員のみなさまはどうぞご参集ください。議題は別途お送り致します。
・大会・総会終了後、懇親会を開催致します。会場準備の都合もございますので、ご出席いただけます方は、11月2日(木)までに事務局・仁平政人(連絡先はウエブ右上参照)にまでご連絡下さい。
・大会に先立って、11時40分より、同会場にて役員会を開催致します。役員のみなさまはどうぞご参集ください。議題は別途お送り致します。
・大会・総会終了後、懇親会を開催致します。会場準備の都合もございますので、ご出席いただけます方は、11月2日(木)までに事務局・仁平政人(連絡先はウエブ右上参照)にまでご連絡下さい。
川端康成『伊豆の踊子』における自然の表象 ―英訳との比較から―
秋田県立大学 江口 真規
川端康成の『伊豆の踊子』(1927)は、エドワード・サイデンステッカーによって 1955 年に The Izu Dancer として英訳された。原文と訳文を比較した際の大きな違いの一つは、自然の表象である。主 人公と老人や旅芸人との交流の場面が大幅に削除されることにより、擬人化された自然の表現や、 老人や死んだ赤子につきまとう「水」のイメージ、鬱蒼とした山、鳥鍋の様子など、そこに含まれ る多義的な自然表象は姿を消している。先行研究でも指摘されてきたように、この英訳の初出であ る The Atlantic Monthly の別冊誌が反共的な性格をもつ冷戦プロパガンダの下に出版されたことを 考えれば、自然表象もまた、日本を海外に紹介するエキゾチックな明るい旅行記の機能を補強して いたといえるだろう。原作に描かれた伊豆の自然は翻訳によって変化することになるが、この点に ついて本発表では、エコクリティシズムにおける場所の概念と翻訳という問題を提起したい。
東西の〈蟋蟀〉をめぐって ―芥川「羅生門」とエリオット『荒地』の場合―
筑波大学名誉教授 荒木 正純 氏
本発表は、芥川「羅生門」(1915 年)の〈蟋蟀〉とT.S.エリオット『荒地』(1922 年)の〈cricket〉 のテキスト内における存在性を追究し、東西の〈蟋蟀〉に関する捉え方の差異を呈示しつつ、芥川 とエリオットのテキスト生成の実態に迫る。
前半では、「羅生門」の「蟋蟀」について、吉田精一(1970 年)、海老井英次(1982 年)、首藤基澄(1997 年・2008 年)の読みを検証したのち、荒木(2010 年)の読みを呈示する。そ こでは、この語が明治期の「蟋蟀(きりぎりす)」言説、とりわけ明治期に英語から多数翻訳された イソップ寓話「蟻と蟋蟀」を連想させることを検証したのち、この寓話を使用した多くの「修身」 言説に対する芥川の姿勢を読みとることになる。
後半では、『荒地』の〈cricket〉をとりあげ、まずこの語が日本語訳では「蟋蟀」と訳され、多 くはとりわけその「声」との関連から読まれているが、典拠の旧約聖書ではこの語は食べ物と位置 づけられていることを指摘する。ラテン語訳ウルガタ聖書で対応する語「オフィオマクス (ophiomachus)」は、「蛇使い座」と「アスクレーピオス」を意味し、後者は〈アプロディーテとヒ ポリトゥス〉神話の重要な登場人物であり、エリオットはこの神話を読みとらせる装置として 〈cricket〉を使用したことを検証する。
満洲国の女性作家・梅娘の日本経験と近代的主婦像
秋田大学 羽田 朝子
満洲国の代表的な中国人女性作家である梅娘(1916〜2013)は、1930 年代後半から 40 年代初頭 にかけて日本に滞在している。帰国後は日本占領下の北京へと移り、女性をテーマに数々の作品を 書き、文壇の中心人物として活躍した。しかし同時に『婦女雑誌』誌上で日本の銃後の女性を称賛 する言論を発表したことから、現在でも民族主義の観点から批判がされている。
これに対し本発表が着目するのは、梅娘の滞在当時の日本では、都市化が進んだことにより近代 的主婦が社会の広い範囲で登場し、また戦時下において女性の動員が必要となったことから、その 社会進出や地位向上が一定程度実現していたことである。こうした事情が、梅娘の『婦女雑誌』で の言論にも大きく影響を与えたのである。
これを踏まえ、本発表では梅娘の日本経験――とくに梅娘が日本滞在時に大ベストセラーとなり 話題を呼んだ石川達三『母系家族』や細川武子『女学生記』の翻訳に着目する。その上で『婦女雑 誌』での文学活動を再考し、占領下の女性知識人としての梅娘の複雑な境遇や精神を明らかにする。
貧民の空間 ―明治の貧困表―
秋田県立大学 加賀谷 真澄
明治初期から中期にかけて、都市に生きる貧民の暮らしぶりが新聞や雑誌でくり返し報じられる ようになった。その多くは、住環境の不衛生さや犯罪率の高さなどに焦点を当てており、貧民が衛 生・道徳観念を欠いた、人間の枠組みから逸脱した生き物であるかのように描いている。また、彼 らの好ましくない性質は、特定の地域と結びつけられ、土地名に言及するだけでどのような階層の 住民が住んでいるかが想起されるようになっている。このような貧民表象は、文学作品においても 用いられており、貧困の空間はストーリーの展開や登場人物の性質を決定する装置となっている。
本発表は、明治期の貧民表象が、観察者の立場や視点、そして社会的な状況によって強調する負 の要素を微妙に変化させていることに注目し、それは近代国家としての日本社会が貧困をどのよう 捉えるかという試みであったことを考察する。
本年度東北大会のご案内です。
日本比較文学会2017年度東北大会を下記の要領で開催致します。
皆様ふるってご参加ください。(一般来聴歓迎)
記
・日時 2017年11月11日(土)13:00~
・場所 あきた文学資料館 2階講座室
アクセス→あきた文学資料館のページ|秋田県立図書館
[研究発表]13:05~14:15
(司会) 高橋秀晴
貧民の空間 ―明治の貧困表象― 加賀谷 真澄
(司会) 佐野正人
満洲国の女性作家・梅娘の日本経験と近代的主婦像 羽田 朝子
[特 集]自然表象と〈モノ〉の翻訳 14:30~16:40
(司会) 仁平 政人
〇講演
東西の〈蟋蟀〉をめぐって
―芥川「羅生門」とエリオット『荒地』の場合― 荒木 正純 氏
〇研究発表
川端康成『伊豆の踊子』における自然の表象 ―英訳との比較から― 江口 真規
ディスカッサント 山﨑 義光
[総 会] 16:40~17:00
[懇親会] 17:30〜 秋田駅周辺の予定
*懇親会にご出席を希望される方は、