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日本比較文学会の東北支部活動について情報発信して参ります。

日本比較文学研究会東北支部 第14回比較文学研究会のお知らせ

研究会のご案内です。

下記の第14回比較文学研究会を下記の要領で開催致します。

皆様ふるってご参加ください。(一般来聴歓迎)

 

       記

 

・日時 2016年7月31日(日)13:30~ 

・場所 仙台市民会館 視聴覚室 

   (会場アクセス→仙台市民会館 交通アクセス

 

・プログラム

                          総合司会 高橋 由貴          

[開会の辞]                  東北支部長 伊藤 豊

[研究発表]   13:35〜14:45          

 

                            司会 塩谷 昌弘   

 小林 竜一
 〈太平洋の橋〉としての高木八尺

 

                                       司会 佐藤 伸宏

 中島 淑恵

 ハーンとボードレール
   ―ボードレール散文詩「月の恵み」の英訳をめぐって―


[特集]再論:〈戦後〉日本文学のアメリカ表象 15:00〜17:00

 

                                                司会・コーディネーター 森岡 卓司

 

 鈴木 貴宇

 青空のゆくえ:あるいは戦後日本社会における「アメリカ」表象の分析

 

 山﨑 義光

 三島由紀夫のアメリカ認識

                      ディスカッサント  仁平 政人

 

[懇親会]

  *仙台駅周辺にて予定しております

[研究発表]要旨①

〈太平洋の橋〉としての高木八尺


                 小林 竜一(早稲田大学国際言語文化研究所)


 『武士道』の著者として知られる新渡戸稲造は、「太平洋の橋」を「日本の思想を外国に傳え、外国の思想を日本に普及する媒酌」(『帰雁の葦』)と定義した。本発表で扱う高木八尺(1889-1984)は、日本英学史に名を残す神田乃武を父に持ち、第一高等学校在学中には内村鑑三と新渡戸に学んだ。やがて新渡戸に嘱目され、東京大学に設置されたアメリカ研究の寄付講座(「ヘボン講座」)の初代担当者に任命された高木は、日本におけるアメリカ研究の基礎を構築するとともに、新渡戸の衣鉢を継承する「太平洋の橋」として、破局へと向かう日米関係の改善に尽力した。
 本発表では、新渡戸との関連性を重視しつつ、戦前日本における知米派知識人の高木の言動を日米関係の推移というコンテクストに即して分析することにより、高木がアメリカに何を求め、アメリカのどのような特質を日本において普及させようとしたのかについて明らかにしたい。

[研究発表]要旨②

ハーンとボードレール

   —―ボードレール散文詩「月の恵み」の英訳をめぐって—―

                           中島 淑恵(富山大学


 ボードレール散文詩は、その内容および形式において、ラフカディオ・ハーンが自らの表現手段としての文体を獲得して行く上で大きな影響を及ぼしたものと考えられる。本発表は、ハーンが生涯に二度英訳を発表したボードレール散文詩「月の恵み」の二つのテクストを比較検討することによって、その影響のありようについて考察を行おうとするものである。
 ハーンによるこの散文詩の最初の英訳は、1882 年3 月12 日付の『タイムズ・デモクラット』紙のコラムとして発表されたものであり、いま一つは、東京帝国大学の講義の中で、「もっぱら夢想と夢と哲学的空想を表現するのに適した」 ボードレールの詩的散文の好例としてこの散文詩を紹介したものである。およそ20 年の時を隔てたこの二つの翻訳の間にはさまざまな相違点がある。20 年という時間の隔たりが、ハーンのボードレール理解の何を変容させ、あるいは何を変容させなかったのか、検討してみたいと考えている。

[特集]趣旨文

再論:〈戦後〉日本文学のアメリカ表象

                                                                       司会・コーディネーター 森岡卓司

  

 占領期資料の整備と公開との進捗にともなって、第二次世界大戦後の占領という体験を具体的な位相において再検討する研究がいくつかの注目すべき成果をあげつつある。それらは、その後に続く時代の日本文学、とりわけ、閉じられた一定のイメージのもとに語られてきた〈戦後〉文学の像を再考する契機ともなりうるだろう。今回の特集では、吉見俊哉『親米と反米―戦後日本の政治的無意識』、大塚英志サブカルチャー文学論』、赤坂真理『愛と暴力の戦後とその後』などの先行する成果も手がかりとしつつ、こうした問題に取り組んでみたい。本特集は、個別の研究発表によって構成するが、終了後、総合的な討議の時間を用意したい。

[特集発表]要旨①

青空のゆくえ:あるいは戦後日本社会における「アメリカ」表象の分析


                       鈴木 貴宇(東京支部、東邦大学

 

 戦後日本社会が出発する占領期の言説を概観すると、「焼け跡」に代表される喪失感と並んで、戦後民主主義社会の到来と希望を象徴する〈青空〉表象の頻出に気づかされる。その様態を大衆文化において象徴するものとして、並木路子の歌う「リンゴの唄」(1946)が挙げられる。「赤いリンゴ」に込められた生命的なるものへの希求と、これから始まる新しい時代への希望が〈青空〉として表象されている様子が看取される。しかし、視線を例えば戦後詩に向けると、そこで登場する〈青空〉には希望だけではない、重層的な意味が込められてもいたことが明らかになる。飯島耕一は、代表作「他人の空」において、禍々しいまでに物質的で絶対的な他者としての「空」を描くことで、敗戦期の人々が経験したであろう虚無感と疎外感を形象化した。本発表は、こうした重層的な意味を持つ〈青空〉表象に着目することで、敗戦から占領期を経た時期の日本社会に生きた人々の感受性を抽出し、それがやがては生活全般のアメリカナイゼーションへと浸透していく様態を明らかにしようとするものである。

[特集発表]要旨②

三島由紀夫のアメリカ認識


                            山﨑 義光(秋田大学


 三島には6 回の渡米体験がある。「世界で一番ニューヨークが好き」(「ニューヨーク」1960)という三島は、端的に言えば親米である。とはいえ、それは理想や憧れ(それゆえの劣等感)の対象だったのではない。パリやロンドンよりも、アメリカにこそ20 世紀の世界的動向の尖端が体現されているとみた。「憂國」と同年に発表した「美に逆らうもの」(1961)では、「北米合衆国はすべて美しい」とし、「ディズニイ・ランド」と「大雑誌の広告欄」といった「商業美術」に「現代的な美の普遍的な様式」をみる。その一方で、「ひたすら美的感覚を逆撫でするやうなもの」をこそ求め、「香港」のタイガーバーム・ガーデンを、ポー「アルンハイムの地所」になぞらえて、見出していた。両者はポジとネガのような表裏の関係にある。そうした20 世紀後半のモダニティ認識と批評的な視角の変奏を、「幸福といふ病気の療法」(1949)から「旅の墓碑銘」(1953)『鏡子の家』(1959)「帽子の花」『美しい星』(1962)などの小説にみることができる。三島がアメリカ認識を経由して提起した「居心地の悪さ」(大塚英志)をめぐって考えたい。

[事務局よりお知らせ]

・大会に先立って、11:30 より、同会場にて役員会を開催致します。
役員のみなさまはどうぞご参集ください。議題は別途お送り致します。


・大会終了後、懇親会を開催致します。会場準備の都合もございますので、ご出席いただけます方は、7/25(月)までに事務局(山形大学森岡研究室)までご連絡下さいますと幸いです。会費、会場等は未定ですが、JR 仙台駅近辺を予定致しております。