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[研究発表]要旨①

7月26日(土)に仙台震災復興記念館で開催される第12回比較文学研究会の発表要旨をお知らせします。

 

【研究発表①】

木戸浦豊和「印象 (Impression) ・表現 (Expression) ・同情 (Sympathy) ―夏目漱石における表現理論 (Expression Theory)―」

 本発表は、『文学論』(1907)や『文学評論』(1909)で展開された夏目漱石の文学理論を、19 世紀後半から20 世紀初頭における文学論や芸術論の文脈で捉え返すことを課題とする。漱石は、『文学論』において、「由来文芸の要素は感じを以て最とするものなるが故に、此感じを読者に伝へむとして伝へ得たる時吾人はこれに文芸上の真を賦与するを躊躇せず」と主張するとともに、『文学評論』では、「文学といふものは製作上から云ふと、自己の情感(エモーシヨン)の発現(エキスプレシヨン)であつて読者から云へば著者の情感を伝へられ(トランスフアー)又は読者一流の感情を起させる者である」と定義した。本発表では、このような漱石の文学理論を「表現理論 (Expression Theory)」、もしくは、「表現主義 (Expressionism)」と理解し、漱石の「表現理論」の特質を、特にトルストイ『芸術とは何か? (What is Art?)』(英訳1898)の受容の問題として検討することによって、明らかにしたい。