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日本比較文学会東北支部のページ

日本比較文学会の東北支部活動について情報発信して参ります。

[研究発表]要旨②(特集:翻訳と文芸理論 ―20 世紀日本文学の幕開け―)

【特集・研究発表②】

仁平政人「翻訳」と(しての)モダニズム―「新感覚派論争」再考―」
 「新感覚派」をはじめとする一九二〇年代の日本モダニズム文学は、従来、西洋のモダニズム文学(芸術)の受容・影響において成立したということが定説的に語られてきた。だが、西洋モダニズムの一方向的な「影響」を想定する視点においては、実際のモダニズム文学言説の形成のありようや、そこに孕まれる複数のベクトルの所在が往々にして取り落とされてきたように思われる。本発表では上記の問題を考える上で、所謂「新感覚派論争」に焦点を合わせる。

 この論争が興味深いのは、それがポール・モーラン作、堀口大学訳『夜ひらく』の評価を重要な争点とし、また、横光利一に影響を及ぼした翻訳者・生田長江を主な参加者の一人として、「文学の革新」をめぐる複数の理念・価値観が競合する場としてあったということである。発表では、堀口訳『夜ひらく』が論争を通して「モダニズム文学のカノン」のように位置づけられていった過程を軸として、新感覚派文学をめぐる言説の形成と、そこにおいて見失われることになった別のモダニズム的思考について光を当てることを課題とする。