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[特集]趣意文

「悲劇」再考                      仁平政人(弘前大学

「悲劇」という言葉は、多くは十分な定義を欠いたまま、実に多様な文脈で用いられ続けている。その傍らで、ジャンルとしての「悲劇」を正面から論じる試みは今日では乏しく、それを「時代遅れの主題」のように見なす傾向も存在する。だが、例えばサブカルチャーを含む現代の物語文化を捉える上でも「悲劇」という観点は有効な視角となるはずであり、その意味でも、「悲劇」というジャンル、またそれをめぐる多様な言説を検討することの意義はいささかも減じていないように思われる。本特集は、英文学研究の第一人者で『悲劇とは何か』の著者である加藤行夫氏の講演と、田中一隆氏・塩谷昌弘氏の研究発表、そしてフロアを交えた総合的な討議により、この古典的にして未解決な問題に新たな光を当てることを目的とする。