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日本比較文学会東北支部のページ

日本比較文学会の東北支部活動について情報発信して参ります。

[研究発表]要旨①

ミレナ・イェセンスカーの西洋諸国観 ―1920 年代に書かれたモード記事を通して―  半田 幸子(東北大学大学院)

 

 本発表の目的は、戦間期チェコで活躍したジャーナリスト、ミレナ・イェセンスカー(Milena Jesenská,1896-1944、以下ミレナと呼ぶ 。)の1920 年代のモード記事にみられる彼女の西洋諸国観、なかでも特にイギリス観、フランス観およびドイツ語圏観を中心に探ることである。

 ミレナの名は、今日では、20 世紀を代表するプラハのドイツ語作家フランツ・カフカ(Franz Kafka,1883-1924)の情熱的な書簡の名宛人、または「恋人」として知られているが、当時のチェコにおいて彼女はカフカよりも有名な存在であった。彼女は、戦間期を通して新聞や雑誌に1000 以上の記事を残しており、モード記者、翻訳家、編集者、ジャーナリストとして大変活躍していたのである。しかし残念なことに、政治や言語が障壁となり、彼女についての研究といえばもっぱら伝記で、著作についての研究はほぼ見当たらない。唯一といえる著作分析は、英語圏で刊行された記事選集『ミレナ・イェセンスカーのジャーナリズム 』の序章(pp.1-41)のみである。
 さて、ヘイズの前掲書では、ミレナの記事は「ファッション、インテリアデザイン、社会問題について」(p.2)だと述べられているが、発表者がみたところ、社会問題だけではなく、女性としての作法、生き方などライフスタイルと称せるテーマに及ぶことも多くある。いずれにしても、モード記事といってもテーマはモードに留まることはなかった。そのような彼女の記事にはまた、イギリスやフランスが登場することが非常に多い。一方で、ドイツ語圏が挙げられることは少なかった。
 本発表では、1918 年にハプスブルク帝国からの独立を果たしたチェコスロヴァキアという文脈で捉え、チェコの政治的な立場も考慮に入れながらミレナの記事を分析する。そして、最終的な目標として、ミレナの西洋諸国観を明らかにすることによって、彼女自身の考えを明確化するだけではなく、チェコにおけるミレナの位置づけを探りたい。また、チェコの政治的な立場と文化的な視点の方向性が一致するのか否かにも注目したい。