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[特集研究発表]要旨②

梁姫淑

  朝鮮戦争とアメリカ占領軍 ―張赫宙『嗚呼朝鮮』『無窮花』を中心に―

 張赫宙作『嗚呼朝鮮』(新潮社、1952)と『無窮花』(講談社、1954)は、朝鮮戦争を背景にして書いた長編小説である。張は朝鮮戦争が勃発すると、戦争の実態を取材するため二度にわたって祖国を訪問して、その内容をルポルタージュとして『毎日情報』やその他の雑誌に寄せる一方で、『嗚呼朝鮮』や『無窮花』にも反映させた。
本発表では、まず『嗚呼朝鮮』と『無窮花』の内容を比較・分析して、朝鮮戦争におけるアメリカ占領軍のイメージが作品の中でどのように表象されていたかを考察する。さらに、日本国内における占領軍のイメージとも重ね合わせて考察することを通して、日本と韓国におけるアメリカ占領軍の「光」と「影」を明らかにしていきたい。これらの問いは、この二つの作品の間に帰化する張赫宙が、祖国の不幸を目の当たりにしてどのような問題意識を抱いていたのかを明らかにしてくれると考えている。