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要旨①

興行の比較映画史 ―戦前期の日本を中心として―

             成田 雄太(山形大学人文学部附属映像文化研究所)

 山本喜久男の『比較映画史』(一九八三)は、一八九九年から一九三五年までの戦前期において日本映画が欧米映画からどのような影響を受けたのか、入念な調査を行い検討した大著である。日本映画が欧米映画を学習していく過程を素描し、その類似性から差異を発見する、即ち日本映画の独自性を浮かび上がらせるという方法論は、その後の日本映画研究において大きな意味を持つこととなった。

 山本の比較映画史のアプローチにおいて、欧米からの影響は基本的に同時代の作品間、作家間の比較から求められる。一方で山本が対象とした戦前期における映画メディアの受容は、興行という側面、即ちそれがどのような形で上映されていたかという問題を無視することはできない。

 本発表は、映画館プログラムをはじめとした映画資料を用いて、比較映画史というアプローチを興行という側面から検討し直すものである。それによって作品や作家を論じるだけでは見えてこない、日本映画における欧米映画からの影響をより広範に捉えることを目的とする。