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[研究発表]要旨①

ポンティングの見た日本人

  ―1900年代に撮影された肖像写真における表現とその意図―

                矢島 真澄美(東北学院大学) 

          

    英国人写真家ハーバート・ジョージ・ポンティング(Herbert George Ponting 1870–1935)は、1901年から1906年までの間に幾度も日本を訪れ、およそ3年の月日を過ごした。彼の作品は、ステレオ写真『立体鏡で見る日本』Japan through the Stereoscope(1904)や、写真集『富士山』Fuji-san(1905)、日本での体験をまとめた著書『逸楽の国 日本にて』In Lotus-Land Japan(1910)など様々な媒体で発表された。これらの写真には、人物、自然、町並み、風俗とそのテーマは幅広く、また、常に被写体同士の関係性を見極め、構図法や表現方法を工夫することで、彼独自の見解を提示しようとする姿勢が表れている。

 本発表では、人物を被写体とした写真を取り上げ、ポンティングが考える肖像写真とはどのようなものであり、またその表現にはどのような意図があったのかを探っていく。その際に、1900年代、写真界で盛んに論じられていたストレート・フォトグラフィー(Straight Photography)と、演出によって撮影された横浜写真について整理していく。1900年代を中心に日本の様々な被写体を撮影したポンティングの写真表現とその意図を探ることは、日本紹介の写真における横浜写真のその後を知る手がかりとなるだろう。