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[要旨⑤]

1960年前後の〈東北〉表象と石坂洋次郎編『津軽

森岡卓司(山形大学

 

 石坂洋次郎編『津軽 〈詩・文・写真集〉』(新潮社 1963)は、石坂、高木恭造、小島一郎の既発表作を改めて編集したものである。高橋しげみ(「北を撮る―小島一郎論」、『小島一郎写真集成』インスクリプト 2009)は、本書刊行の前史に小島と北畠八穂との雑誌グラビアページ上のコラボレーション(『中央公論』1961.12)があったこと、また、本書の編集構成に小島一郎の主体的な関与があったことを指摘したうえで、北方(東北、北海道)表象に関する小島の複雑なスタンスを論じている。本発表においては、ここに石坂、高木両者のテクストの選択、配列の問題を併せ考えつつ、「あとがき」において石坂が述べる本書の主題「津軽エスプリ」を、戦後の〈東北〉表象の文脈に再浮上させてみたい。