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[要旨③]

写真家ポール・ストランドの作品に見る異文化表象

矢島真澄美(東北学院大学

 

 写真家ポール・ストランド(Paul Strand 1890年−1976年)は、1900年代のアメリカで、「ダイレクト」と称されるほどまっすぐに被写体と対峙し、彼独自のストレート・フォトグラフィーを確立したことで知られている。

 ストランドについては、これまでも肖像写真を撮影する際に用いた隠し撮りの手法や、社会的問題を扱った写真などについての研究がされてきた。しかし、表現における特徴や時代背景を考慮しつつ、異文化表象という視点から一つ一つの作品を詳細に分析した研究は管見の限り見つかっていない。そこで、本研究では、異文化表象という視点から、ドキュメンタリー写真と芸術写真の両方の要素を兼ね備えていたと考えられる彼の作品の新たな一面を提示していきたい。

 まずは、そのための一歩として、本発表では、1900年代のアメリカにおける写真界の表現に対する議論について整理しながら、写真集『メキシコの作品集』The Mexican Portfolio(1967)を考察していくこととする。