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[研究発表]要旨②

髙畑早希(名古屋大学大学院)

 

    大庭みな子「火草」・「トーテムの海辺」論

        ――自然や民話と交感して物語る女性像をめぐって


 1970年前後の日本では、ディスカバー・ジャパン・キャンペーンの一環として、雑誌
『an・an』に「民話の旅」が特集されるなど、民話を聴きに地方を訪れる女性像がある種の流行を形成していた。同じ時期、1970年に11年間のアメリカ生活を経て日本へ帰国した大庭みな子は、帰国前後にアラスカの民話を題材とした小説を書き、自然や民話と「交感」する女性を登場させている。
 本発表では、大庭みな子の小説「火草」(『文學界』1969年1月)および「トーテムの海辺」(『新潮』1973年11月)を取り上げ、大庭が民話的なモチーフやイメージを作品へ取り入れる際の手法とその変遷を明らかにする。さらに、民話と女性をめぐる同時代の言説について整理しながら、大庭の提示した女性像の特徴をエコクリティシズムの議論を交えて言及してみたい。