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[要旨③]

H.メルラン=カジュマン『#MeToo時代の文学』をめぐって

   森田直子東北大学

 

 フランス17世紀文学を専門とするH.メルラン=カジュマンの近著(Hélène Merlin-Kajman, La littérature à l'heure de #MeToo, Paris, Ithaque, 2020)を紹介しながら、#MeToo運動に文学がどう触発されたかという問題について話題提供したい。主たる話題は、(1)フランス革命期の詩人アンドレ・シェニエ(André Chénier)の田園詩において描かれる羊飼いの青年と少女の「結婚」の解釈をめぐる論争、(2)ガブリエル・マツネフ事件とヴァネッサ・スプリンゴラ『同意』、(3)北米などにおける文学教育現場でのtrigger warning(授業で扱う主題についてあらかじめ警告し、学生の感受性やトラウマに配慮すること)の是非の問題などである。作品の「内容」を議論するよりも、書かれていることを「文字通り」読むことの是非、作品の制作時と受容時の時代錯誤の問題などを取り上げる。(1)で扱う詩と試訳は事前レジュメで配布する。