日本比較文学会東北支部のページ

日本比較文学会の東北支部活動について情報発信して参ります。

[特集発表②]要旨

〈13:50 〜 14:15〉

マイナー文学者高木恭造が表象する満洲 ―エコクリティシズムの観点から―

SOLOMON JOSHUA LEE(弘前大学

 本発表では、高木恭造文学における満洲の表象について考察する。高木は福士幸次郎の下で地方主義を教わり、地方語による詩集『まるめろ』を1931年に出版した。ところが、実に多様である高木文学はほとんど知られておらず、また「方言詩」のうちに入らない作品が既存の研究では取り上げられていない。そこで、満洲日本語文壇の一人としての高木について研究を行っている。

 これまで、発表者の満洲日本語文学論において、「マイナー性」を解析することを目的としてきた。「動物や植物になる者」というテーマを認識し、入植者が大陸の風景に合体する、あるいは人間性を喪失する、といった比喩が用いられることを指摘した。本発表では、試行的に、エコクリティシズムの観点から、高木の満洲文学に目を向ける。家畜、野生の動物、樹木、細菌(結核、ペスト、梅毒)、身体が変化する人間など、幅広い題材を扱った高木文学だが、自然界を通していかに満洲を描いたかという点について、高木のマイナー性や政治性について紹介する。