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[書籍紹介]「種蒔く人」顕彰会編『『種蒔く人』の射程 ――一〇〇年の時空を超えて――』

 「種蒔く人」顕彰会編集による雑誌『種蒔く人』創刊100周年記念の書籍『『種蒔く人』の射程 ――一〇〇年の時空を超えて――』(秋田魁新報社、2022年3月30日)がこのたび刊行されました。

 

 「種蒔く人」顕彰会副会長である高橋秀晴氏(東北支部会員)が編集を担当し、ゆかりの地である秋田において、創刊100年後に『種蒔く人』および運動の意義や歴史の再評価を行った一冊です。

 

 2000年代に入り、相次いで関係者から資料の寄贈・寄託がなされ、秋田市土崎図書館に「種蒔く人資料室」(のち2006年にあきた文学資料館として開館)が設置され、ますますこの雑誌や運動についての研究が進展しているさなか、長年顕彰会として携わってきた専門の研究者から新進気鋭の若手研究者まで幅広い執筆陣を配置し、多様な分野からの多角的な視点での論文が収録されています。

 

 本書において多角的な検討の視座が用意されている点として、具体的には、日本社会文学会および日本比較文学会東北支部といった研究アプローチの異なる分野とのタイアップが挙げられます。(ちなみに日本社会文学会と共同で企画された「「種蒔く人」創刊100周年の集い」は新型感染症の影響もあり2022年10月に延期)

 

 本書中の北条常久氏、杉淵洋一氏、中村能盛氏、阿部邦子氏の4つの章は、2021年11月13日にあきたカレッジプラザで行われた2021年度東北大会のシンポジウム「『種蒔く人』とフランス・ドイツ・ロシア ―創刊100年後の検証―」でのご発表をもとに執筆されたご論考です。

 ハイブリッド形式での開催ながら活発な意見交換がなされた昨年度秋田大会を想起させるものとなっています。

 

 あわせて、巻末に配された関係目録、事項・人名索引(こちらも天雲氏・高橋氏による労作となっています)も、『種蒔く人』を研究する際に必要不可欠な情報となっていることを追記してご紹介しておきたいと思います。

 

 

◆◇◆目 次◇◆◇

 

   序                     北条常久

『種蒔く人』の誕生と展開            北条常久

『異国の戦争』における世界史認識 

  ―小牧近江の言葉による連帯の実践―     小森陽一

ドイツから見た『種蒔く人』 ―ある私的回想―  ウォルフガング・シャモニ

韓国における『種蒔く人』考察          李 集京

ロシア飢饉救済運動をよびかけた『種蒔く人』   長塚英雄

文芸雑誌としての『種蒔く人』 

 ―労働文学とプロレタリア文学の狭間で―    大和田茂

「思想集団」としての種蒔き社          水谷 悟

『種蒔く人』と部落解放運動           北条常久

関東大震災と『種蒔く人』            竹内栄美子

『種蒔く人』と表現座              村田裕和

一〇〇年前に蒔かれた種

 ―小牧近江の留学体験と日本プロレタリア文学運動の源流― 島村輝

『種蒔く人』の精神を受け継ぐもの

 ―一九五七年夏、小牧近江と椎名其二の再会を足がかりに  杉淵洋一

小牧近江と西洋文学               中村能盛

小牧近江著藤田嗣治挿絵装飾 フランス語詩集『詩数篇』を巡って 阿部邦子

再考『種蒔く人』の頃の金子洋文         須田久美

今野賢三の出立                 高橋秀晴

畠山松治郎と小牧谷友治

 ―地方における社会運動の実践―        天雲成津子

沸騰し爆発するシンボルマーク

 ―『種蒔く人』の柳瀬正夢装幀絵図を読む―   甲斐繁人

 

『種蒔く人』関係文献目録            天雲成津子

あとがき                    高橋秀晴

執筆者紹介

事項索引

人名索引     

 

 

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