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[研究発表]要旨①

〈太平洋の橋〉としての高木八尺


                 小林 竜一(早稲田大学国際言語文化研究所)


 『武士道』の著者として知られる新渡戸稲造は、「太平洋の橋」を「日本の思想を外国に傳え、外国の思想を日本に普及する媒酌」(『帰雁の葦』)と定義した。本発表で扱う高木八尺(1889-1984)は、日本英学史に名を残す神田乃武を父に持ち、第一高等学校在学中には内村鑑三と新渡戸に学んだ。やがて新渡戸に嘱目され、東京大学に設置されたアメリカ研究の寄付講座(「ヘボン講座」)の初代担当者に任命された高木は、日本におけるアメリカ研究の基礎を構築するとともに、新渡戸の衣鉢を継承する「太平洋の橋」として、破局へと向かう日米関係の改善に尽力した。
 本発表では、新渡戸との関連性を重視しつつ、戦前日本における知米派知識人の高木の言動を日米関係の推移というコンテクストに即して分析することにより、高木がアメリカに何を求め、アメリカのどのような特質を日本において普及させようとしたのかについて明らかにしたい。