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第17回比較文学研究会(読書会)趣旨文

報告 

 仁平政人「趣味の旅行」、その多様性と葛藤―『旅行のモダニズム』をひらく」

                                

趣旨 (司会・文責 佐藤伸宏

 今回の日本比較文学会東北支部主催比較文学研究会は、昨年度に引き続き読書会の形式で開催します。支部役員会の協議により、読書会の対象として赤井正二氏の著書『旅行のモダニズム 大正昭和前期の社会文化変動』(ナカニシヤ出版、2016・12)を取り上げることになりました。同書は、思想史・社会学を専門とする立場から、近代日本の旅行文化の構築について、社会や文化、メディアや制度等の多様な観点をとおして考察を加えた成果ですが、もとより旅行は洋の東西、時代の新古を問わず文学が描き続けてきたテーマに他なりません。この読書会は、同書の議論を発端として、旅行をめぐる諸問題について文学の側から様々に捉え直し、自由に語り直すことを意図しています。読書会の構成としては、発題者からの問題提起と参加者による自由な意見交換によって全体を構成する予定です。発題者は仁平政人さんにお引き受けいただいております。

 仁平さんには、本書の内容を幾つかの章に力点を置く形で簡略に整理しながら、(1)川端康成における「旅」の問題の読み直し、(2)『旅行のモダニズム』では取り上げられない高度経済成長期における「日本再発見」の文脈と旅行メディアおよび文学者との関連、という2点に結び付ける形で、同書の議論を緩やかに開いていただく予定です。その後、会場全体での意見交換、討議に入ることにいたします。東北支部の企画にふさわしく、参加者全員にご発言いただけるような、自由で活発な議論の場といたしたく考えております。

 『旅行のモダニズム』と題された書籍を読みながら、古今東西の文学と旅に関わる種々の問題について改めて考える機会となれば幸いです。