日本比較文学会東北支部のページ

日本比較文学会の東北支部活動について情報発信して参ります。

[研究発表]要旨①

美女と野獣」の話型からみる『紅の豚』 

                   田中理紗(東北大学大学院博士後期課程)


 「美女と野獣」型の物語には大きく二つのタイプがあり、まず一方には18世紀フランスのヴィルヌーヴ夫人およびボーモン夫人のテクストに基づく「美女と野獣」の翻案作品(絵本、実写映画、ディズニー、ミュージカル)がある。他方で、より広い意味で「美女と野獣」の類型といえる物語群があり、それは古代ギリシャにさかのぼり、現在もいろいろなメディアで存在している。
 後者のタイプにあたる「美女と野獣」の話型を取り入れた作品の中には、「野獣が元の人間の姿に戻り美女と結ばれる」というハッピーエンドとは異なる結末の作品も存在する。その一つが、長編アニメーション映画『紅の豚』(宮崎駿、1992)である。『紅の豚』には、「美女と野獣」のテーマである「野獣が美女から愛されることで元の人間の姿に戻る」という構図がありつつも、呪いが解けたのか、美女と結ばれたのかは曖昧にされている。また、そこに戦争体験のトラウマが「人間の愛」によって癒されるというモチーフが加えられている。
 本発表では、「美女と野獣」のテーマがどのように活用されているのかに注目することで、現代文化におけるおとぎ話「美女と野獣」の変遷の一端を明らかにしたい。

第5回比較文学研究会のお知らせ

研究会のご案内です。

日本比較文学会北海道支部・東北支部共催

第5回比較文学研究会を以下の要領で開催致します。

皆様ふるってご参加ください。

(一般来聴歓迎)

 

       記

 

・日時 2016年3月27日(日)10:30~17:35

・会場 藤女子大学(札幌北16条キャンパス)551番教室

・交通アクセス→藤女子大学|Fuji Women's University

 


総合司会 越野 剛
【開会の辞】(10:30)  
北海道支部長 種田和加子
【研究発表】(10:35~12:05、13:00~14:30)
〈研究発表1〉
美女と野獣」の話型からみる『紅の豚
田中理紗(東北大学大学院博士後期課程)
司会 井川重乃
〈研究発表2〉
ヴァルター・カレと漱石 共鳴する孤独 ―『行人』のドイツ語句をめぐって―
飛ヶ谷美穂子
司会 加藤健司

【昼食休憩】(12:05~13:00)
〈研究発表3〉
村上春樹の〈アメリカ〉 ―『やがて哀しき外国語』、あるいは「人はなぜ走るのか」をめぐって―
塩谷昌弘(盛岡大学
司会 平野 葵
〈研究発表4〉
小川洋子と『アンネの日記』 ―「薬指の標本」『猫を抱いて象と泳ぐ』など―
中村三春(北海道大学
司会 高橋由貴

【ワークショップ】(14:45~17:30)

テーマ《近代日韓トランスカルチャーの諸相を考える》
〈ナビゲーション&パネリスト紹介〉 
コーディネーター・司会 梶谷 崇(北海道科学大学)
〈報告1〉
村山知義と「春香伝」   
韓 然善(北海道大学院博士後期課程)
〈報告2〉
韓国モダニスト詩人たちにとっての〈日本〉 ―鄭芝溶、金起林、李箱のケース―
佐野正人(東北大学
〈報告3〉
1940年代の日本画壇と「崔承喜」舞踊画をめぐって
李 賢晙(小樽商科大学

〈総合討論〉

【閉会の辞】(17:30)  
東北支部長 伊藤 豊   

【お知らせ】[東北大学国際文化研究科]シンポジウム「日韓の相互認識と歴史認識 ―戦後の映画と文学を中心に―」

下記イベントについて、当支部会員の佐野正人氏よりご案内がありましたのでお知らせ致します。

 

シンポジウム「日韓の相互認識と歴史認識ー戦後の映画と文学を中心にー」

日時:2月13日(土) 13:00~17:00
場所:東北大学国際文化研究科1F会議室

プログラム:
・佐野正人 「 戦後の日韓の映画における主体の形成 ―崔寅奎『自由万歳』と黒澤明『わが青春に悔なし』― 」
・波潟剛 「 近現代福岡における韓国/朝鮮をめぐる認識 ―研究事例紹介―」
・チョン・ジョンファ 「1960年代韓国青春映画の地形図 ―剽窃と翻案の間―」
・ハム・チュンボム 「解放初期韓国映画界の再建と再編、 そして植民地朝鮮の過去

【お知らせ】[富山大学人文学部]国際シンポジウム 「ラフカディオ・ハーン研究への新たな視点」

下記イベントについて、当支部会員の中島淑恵氏からご案内いただきましたのでお知らせ致します。

 

富山大学ヘルン(小泉八雲)研究会主催第1回国際シンポジウム
ラフカディオ・ハーン研究への新たな視点」

・2016年2月13日(土)-14日(日) 両日とも
10:00-17:00
富山大学人文学部 第6講義室(富山県富山市五福3190)

・研究会HP:

www3.u-toyama.ac.jp

【プログラム】

13日(土) 第1セッション「ラフカディオ・ハーンとフランス」10:00-17:00

14日(日)第2セッション「ラフカディオ・ハーン研究への新たな視点」10:00-17:00
・西田谷洋(富山大学)「物語のポライトネス:小泉八雲怪談を事例として」
・小谷瑛輔(富山大学)「小泉八雲芥川龍之介
・結城史郎(富山大学)「ラフカディオ・ハーンケルト話:異界との交流をめぐって」
・中島淑恵(富山大学)「ボードレール、ハーンそしてバンディ」
・山本孝一(富山大学)「ラフカディオ・ハーンとドイツ文学」
・長岡真吾(島根大学)「ハーンの伝記記述と英国支配下のイオニア諸島
・真鍋晶子(滋賀大学)「W.B. イェイツ、アーネスト・フェノロサとラフカディオ・ハーン:東西に響く三重奏」
・鈴木暁世(金沢大学)「大正期における「小泉八雲」:アイルランド文学受容と「ケルト」像の移入との関わり」

・座談会 長岡真吾(島根大学)、濱田明(熊本大学)、中島淑恵(富山大学

「島根・熊本・富山の各大学のこれまでの取り組みとハーン研究の将来展望」

 

・お問合せ先:富山大学人文学部中島研究室(toshie〔a〕hmt.u-toyama.ac.jp)

 

 

[支部会員書籍情報]田尻浩幸著『李人稙と朝鮮近代文学の黎明 ――「新小説」「新演劇」の思想的背景と方法論――』

・田尻浩幸著『李人稙と朝鮮近代文学の黎明――「新小説」「新演劇」の思想的背景と方法論――』、明石書店、2015年10月

・書籍情報

www.akashi.co.jp

 

【本書目次】

はじめに

◎第一部 朝鮮近現代文学の夜明け
第一章 愛国啓蒙運動期の演劇改良論――忠義愛国と改新儒学派を中心に
 一 序論
 二 演劇改良と忠義愛国
 三 改新儒学派の対応
 四 結論

第二章 現実を投影・構成する新小説『銀世界』

     ――文明史と儒教主義そして親日の交錯
 一 序論
 二 封建専制下で文明化を推進した義民崔秉陶の姿
 三 「徳」の言説と文明史的視点の共存
 四 民衆意識と国利民福
 五 現実を投影・構成する『銀世界』
 六 結論

第三章 李人稙小説のメロドラマ的性格研究――フランスロマン派的傾向を中心に

 一 序論

 二 李人稙の小説とグロテスクメロドラマ
 三 結論

第四章 李人稙とアンチモダン――「社会学」と「メタ政治学」の視点から―
 一 序論
 二 李人稙の「社会学」を読む
 三 李人稙の倫理観と「国民社会」の合目的性
 四 李人稙の作品と「メタ政治学」
 五 結論

第五章 李人稙の創作意識と方法論に関する考察――松本君平の影響関係を中心に
 一 序論
 二 「近代認識論」の受容と「儒教的伝統」
 三 松本君平と「絶対霊命のリべレーション」
 四 「アレン氏の短篇小話作法」と李人稙の新小説に表れた「道徳的神秘」
 五 李人稙の社会・国家的倫理観と小説創作
 六 結論
 資料1 松本君平著『新聞学』
 資料2 朝鮮文学「寡婦の夢」


◎第二部 李人稙とその時代
第六章 李人稙の生涯とその環境――啓蒙思想形成はいかになされたか
 一 生涯と叙事的考察
 二 東京政治学校と李人稙の文学修養
 三 都新聞社見習い時代
 四 結論

第七章 日本における李人稙

 ――政務局報告書「李人稙ノ行動」及び『東京政治学校雑誌』所収の新資料を中心に
 一 序論
 二 李人稙に関する予備的考察
 三 李人稙と「近代」
 四 結論


おわりに

 資料
 韓国新聞創設趣旨書(1903・5・5)
 李人稙略年譜

 

東北支部会員である田尻浩幸氏の単著が刊行されました。『血の涙』をはじめ、朝鮮の「新小説」および「新演劇」をリードした李人稙、その小説の形成過程について解明する内容です。東京政治学校時代、都新聞社見習い時代といった日本滞在時期の活動について歴史的資料にあたり、李人稙の文学的営為を追跡した一冊となっています。

【第5回日本比較文学会北海道・東北支部共催比較文学研究会】発表者募集のお知らせ

第5回日本比較文学会北海道・東北支部共催比較文学研究会を3月27日(日)、藤女子大学(札幌市)において開催いたします。
つきましては研究発表の募集を行います(自由研究発表のみ、今回は特集発表の募集を行いません)ので、題目と要旨(400字程度)を添えて、下記の支部事務局までお申し込み下さい。
奮ってご応募下さいますよう、お願い申し上げます。

 

1.発表申し込み締切
  2016年1月20日(水)

2.発表申し込み先

  東北支部事務局:山形大学人文学部 森岡卓司

  (※メールアドレス等は右上プロフィール欄をご参照ください)

 

*なお、発表者で常勤でない方には、支部として交通費の補助をさせていただく予定です。お含み置き下さい。
*発表の申し込みをいただいた方には確認のメール(または郵便)をお送りします。