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[研究発表]要旨②

新天地における詩料への欲望——明治期の海外漢詩創作をめぐって――

                             許時嘉(山形大学

漢詩リテラシーは1880年代から、日本帝国主義のアジア進出に伴う海外雄飛思想の影響下で、前近代の知を基盤とする知識人たちのアジア進出の一翼を担い、現地で新たな漢詩文共同体を形成することを可能にした。つまり、近代国民国家の言語ナショナリズムの高揚の中で、漢詩リテラシーは逆説的に海外への拡大・拡張を果たした。一方、新しい詩料を求める内面的精神世界は、どのように現実の政経的な状況に適合しながら、文学的側面を全うしようとしたのか。また、適合できない場合には、どのように外的あるいは内的に変容していったのか。本研究は明治期知識人のアジア滞在経験を分析の軸に据え、彼らの詩文創作の審美性と海外進出の欲望との連続性・不連続性を明らかにしたい。