日本比較文学会東北支部のページ

日本比較文学会の東北支部活動について情報発信して参ります。

【お知らせ】[富山大学人文学部]国際シンポジウム 「ラフカディオ・ハーン研究への新たな視点」

下記イベントについて、当支部会員の中島淑恵氏からご案内いただきましたのでお知らせ致します。

 

富山大学ヘルン(小泉八雲)研究会主催第1回国際シンポジウム
ラフカディオ・ハーン研究への新たな視点」

・2016年2月13日(土)-14日(日) 両日とも
10:00-17:00
富山大学人文学部 第6講義室(富山県富山市五福3190)

・研究会HP:

www3.u-toyama.ac.jp

【プログラム】

13日(土) 第1セッション「ラフカディオ・ハーンとフランス」10:00-17:00

14日(日)第2セッション「ラフカディオ・ハーン研究への新たな視点」10:00-17:00
・西田谷洋(富山大学)「物語のポライトネス:小泉八雲怪談を事例として」
・小谷瑛輔(富山大学)「小泉八雲芥川龍之介
・結城史郎(富山大学)「ラフカディオ・ハーンケルト話:異界との交流をめぐって」
・中島淑恵(富山大学)「ボードレール、ハーンそしてバンディ」
・山本孝一(富山大学)「ラフカディオ・ハーンとドイツ文学」
・長岡真吾(島根大学)「ハーンの伝記記述と英国支配下のイオニア諸島
・真鍋晶子(滋賀大学)「W.B. イェイツ、アーネスト・フェノロサとラフカディオ・ハーン:東西に響く三重奏」
・鈴木暁世(金沢大学)「大正期における「小泉八雲」:アイルランド文学受容と「ケルト」像の移入との関わり」

・座談会 長岡真吾(島根大学)、濱田明(熊本大学)、中島淑恵(富山大学

「島根・熊本・富山の各大学のこれまでの取り組みとハーン研究の将来展望」

 

・お問合せ先:富山大学人文学部中島研究室(toshie〔a〕hmt.u-toyama.ac.jp)

 

 

[支部会員書籍情報]田尻浩幸著『李人稙と朝鮮近代文学の黎明 ――「新小説」「新演劇」の思想的背景と方法論――』

・田尻浩幸著『李人稙と朝鮮近代文学の黎明――「新小説」「新演劇」の思想的背景と方法論――』、明石書店、2015年10月

・書籍情報

www.akashi.co.jp

 

【本書目次】

はじめに

◎第一部 朝鮮近現代文学の夜明け
第一章 愛国啓蒙運動期の演劇改良論――忠義愛国と改新儒学派を中心に
 一 序論
 二 演劇改良と忠義愛国
 三 改新儒学派の対応
 四 結論

第二章 現実を投影・構成する新小説『銀世界』

     ――文明史と儒教主義そして親日の交錯
 一 序論
 二 封建専制下で文明化を推進した義民崔秉陶の姿
 三 「徳」の言説と文明史的視点の共存
 四 民衆意識と国利民福
 五 現実を投影・構成する『銀世界』
 六 結論

第三章 李人稙小説のメロドラマ的性格研究――フランスロマン派的傾向を中心に

 一 序論

 二 李人稙の小説とグロテスクメロドラマ
 三 結論

第四章 李人稙とアンチモダン――「社会学」と「メタ政治学」の視点から―
 一 序論
 二 李人稙の「社会学」を読む
 三 李人稙の倫理観と「国民社会」の合目的性
 四 李人稙の作品と「メタ政治学」
 五 結論

第五章 李人稙の創作意識と方法論に関する考察――松本君平の影響関係を中心に
 一 序論
 二 「近代認識論」の受容と「儒教的伝統」
 三 松本君平と「絶対霊命のリべレーション」
 四 「アレン氏の短篇小話作法」と李人稙の新小説に表れた「道徳的神秘」
 五 李人稙の社会・国家的倫理観と小説創作
 六 結論
 資料1 松本君平著『新聞学』
 資料2 朝鮮文学「寡婦の夢」


◎第二部 李人稙とその時代
第六章 李人稙の生涯とその環境――啓蒙思想形成はいかになされたか
 一 生涯と叙事的考察
 二 東京政治学校と李人稙の文学修養
 三 都新聞社見習い時代
 四 結論

第七章 日本における李人稙

 ――政務局報告書「李人稙ノ行動」及び『東京政治学校雑誌』所収の新資料を中心に
 一 序論
 二 李人稙に関する予備的考察
 三 李人稙と「近代」
 四 結論


おわりに

 資料
 韓国新聞創設趣旨書(1903・5・5)
 李人稙略年譜

 

東北支部会員である田尻浩幸氏の単著が刊行されました。『血の涙』をはじめ、朝鮮の「新小説」および「新演劇」をリードした李人稙、その小説の形成過程について解明する内容です。東京政治学校時代、都新聞社見習い時代といった日本滞在時期の活動について歴史的資料にあたり、李人稙の文学的営為を追跡した一冊となっています。

【第5回日本比較文学会北海道・東北支部共催比較文学研究会】発表者募集のお知らせ

第5回日本比較文学会北海道・東北支部共催比較文学研究会を3月27日(日)、藤女子大学(札幌市)において開催いたします。
つきましては研究発表の募集を行います(自由研究発表のみ、今回は特集発表の募集を行いません)ので、題目と要旨(400字程度)を添えて、下記の支部事務局までお申し込み下さい。
奮ってご応募下さいますよう、お願い申し上げます。

 

1.発表申し込み締切
  2016年1月20日(水)

2.発表申し込み先

  東北支部事務局:山形大学人文学部 森岡卓司

  (※メールアドレス等は右上プロフィール欄をご参照ください)

 

*なお、発表者で常勤でない方には、支部として交通費の補助をさせていただく予定です。お含み置き下さい。
*発表の申し込みをいただいた方には確認のメール(または郵便)をお送りします。

[事務局よりお知らせ]

・大会に先立って、12:00 より、同会場にて役員会を開催致します。役員のみなさまはどうぞご参集ください。議題は別途お送り致します。


・大会終了後、懇親会を開催致します。会場準備の都合もございますので、ご出席いただけます方は、12/11(金)までに事務局までご連絡下さいますと幸いです。会費、会場等は未定ですが、盛岡駅の近辺を予定致しております。

[特集研究発表]要旨②

梁姫淑

  朝鮮戦争とアメリカ占領軍 ―張赫宙『嗚呼朝鮮』『無窮花』を中心に―

 張赫宙作『嗚呼朝鮮』(新潮社、1952)と『無窮花』(講談社、1954)は、朝鮮戦争を背景にして書いた長編小説である。張は朝鮮戦争が勃発すると、戦争の実態を取材するため二度にわたって祖国を訪問して、その内容をルポルタージュとして『毎日情報』やその他の雑誌に寄せる一方で、『嗚呼朝鮮』や『無窮花』にも反映させた。
本発表では、まず『嗚呼朝鮮』と『無窮花』の内容を比較・分析して、朝鮮戦争におけるアメリカ占領軍のイメージが作品の中でどのように表象されていたかを考察する。さらに、日本国内における占領軍のイメージとも重ね合わせて考察することを通して、日本と韓国におけるアメリカ占領軍の「光」と「影」を明らかにしていきたい。これらの問いは、この二つの作品の間に帰化する張赫宙が、祖国の不幸を目の当たりにしてどのような問題意識を抱いていたのかを明らかにしてくれると考えている。

「特集研究発表]要旨①

高橋由貴

 大江健三郎のアメリカ体験 ―「アメリカの夢」から「狂気を生き延びる」文学へ

 

 1965 年の夏から秋にかけて、大江健三郎は初めてアメリカを旅行する。このアメリカ滞在は、ロックフェラー財団が提供するハーバード大学国際夏季セミナーへの出席と、国防省主催のインターナショナル・ビジター・リーダーシップ・プログラムに基づくアトランタ市、ミシシッピー周辺地方の視察であった。この旅行について、滞在中および旅行後、『アメリカ旅行者の夢』(『世界』、1966年9 月~12 月)をはじめとするいくつものエッセイを発表する。とくにこの『世界』連載は、岩波新書での出版を前提としたものだったのだが、「暗礁にのりあげ、中絶したまま」「書きつぐことがおよそ不可能になる」(『鯨の死滅する日』1972 年)。では、それは一体なぜなのだろうか。
 本発表では、1965 年前後に執筆された批評的散文を扱い、大江が「アメリカン・ドリーム」という語で描いたアメリカ受容の様態を論じたい。具体的には、若き飛行士リンドバーグ、大統領ケネディ、そして核戦争をシミュレーションするハーマン・カーンらを代表例とするアメリカン・ヒーローたちの「夢」と、この「アメリカン・ドリーム」が体現する1960 年代の状況に抗して執筆する現代アメリカ文学への評価と大江独自の解釈を辿る。さらに、これらの検討を踏まえた上で、なぜ、冷戦構造下に展開される大江文学の根幹に《se dépasser》《outgrow》などといった「生き延びる」という概念が据えられるのかを明らかにする。また、これらを論じることによって、1970年代に入り、大江がアメリカという問題を離れ、沖縄や南米に目を転じ、あるいは民俗学をはじめとする土着的なものへと関心を向ける道筋ついても検討する予定である。