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[研究発表①]要旨

Chaves Goncalves Pinto, Felipe(筑波大学大学院)

Augusto dos AnjosのEu(1912)と石川啄木『悲しき玩具』(1912)におけるメランコリーの文芸的な表現について

 

 「メランコリー」というのは深刻な悲しみに陥る可能性があるあらゆる人間の根本的な悩みと、そこから生み出される社会問題との関連性が深いとみなされている。そのため、特定の時代、領域、国籍等の問題というよりも、人間の問題として扱われたほうが適切である。しかし、時代と社会の状況によって、メランコリーが多く生じやすいこともある。急激で刺激的な社会文化の変化と急速な技術の進歩であった19 世紀の転換期もそのような時代の一つの事例だといえる。

 本発表では、19世紀から20世紀の転換期にブラジルと日本という対蹠地でそれぞれ同時代に生活を送っていた詩人であるAugusto dos Anjos(1884-1914)と石川啄木(1886-1912)をとり上げ、彼らの作品であるEu(『我』、1912)と『悲しき玩具』(1912)におけるメランコリーの文芸的な表現を簡潔に比較的に考察する