日本比較文学会東北支部のページ

日本比較文学会の東北支部活動について情報発信して参ります。

[特集発表④]要旨

〈14:50 〜 15:15〉

日本新聞』とロシア・ソビエト文学―シベリア抑留者の文学空間―

溝渕園子(広島大学

 第二次世界大戦での日本の降伏が決定した後、極東ハバロフスクで刊行されたタブロイド版の『日本新聞』(1945年9月15日-1949年12月30日)は、シベリア抑留者にとって唯一の日本語新聞であった。ソ連陸海軍政治部の下におかれ、日本人捕虜の政治思想教育を目的としていたが、記事内容は政治・社会の他、文学も含まれている。各々の情報源は、当時のソ連と日本の双方の報道メディアとされ、発行に際しては日本人も参画した。本報告では、宣伝メディアとしての『日本新聞』の性質をふまえつつ、収容所という閉塞的な場が、情報を介してソ連国内や日本国内とつながることによって、そこにいかなる文学空間が立ちあらわれたのかを検討する。シベリア抑留者の間で共有されていた、文学的体験について議論するための手がかりを探りたい。